私またやっちゃったぁ、と美容師

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行きつけの美容院の美容師Kさん、今度は2回連続でイタリアにH田というサッカー選手のヘアスタイルストの助手として出張してきた。

1回目は成田からカメラマンと一緒に現地まで行って、何の問題もなく仕事をこなしてきたのだが、2回目はチケットの都合がつかず、経由地のヘルシンキまで一人で行くこととなった。

「一人で海外行くのははじめてやし、大丈夫やろか」などと不安そうに言ってたので、一応ネットで乗り換え方法とか調べて行ったほうがいいかもね、とアドバイス。
でもヘルシンキはそんなに大きな空港じゃないし、乗り換え時間が2時間もあるから、パスポートと財布だけ忘れなかったら、何が起こってもリカバリできるでしょ、と勇気づけていた。

1か月後また髪を切りに行ったとき、楽しみにしてたその後の話を聞こうと思ってたら、こっちが切り出す前に、Kさんが自分から、「わたし、ヘルシンキでまたやっちまったんですよ」と話し始めた。

ヨーロッパでは最初に入る空港で入管を通るが、今回一人で入管通過は初めて。緊張して周りが見えない状況で、自分の番になって管理官がパスポートを受け取ろうと手を伸ばした瞬間、Kさんはいきなり小さいガラス窓から手を差し入れて管理官と握手をしたそうな。

管理官は一瞬びっくりしたけど、大声で笑い始めて、その様子に気づいたほかの管理官も大笑い。周りが爆笑に包まれたらしい。
プルドッグみたいな顔のでっかいおっちゃんが、めっちゃ笑いながら、「サンキュー、バット、パスポートプリーズ」っていって、私も大笑いしましたー。
ピリピリしがちな入管で笑いを取るなんてさすがはKさんだ。

そのことをイタリアに着いてからほかのスタッフに話したら、突っ込みの嵐。

「前の人見てたら、そんな勘違いありえないだろ」
「その管理官、しばらくそのネタでバーで飲むんだろうな」
「あの小さな窓から手いれて握手するのって大変じゃなかった?」

ってさんざ言われましたぁ。と明るく報告してくれた。

いやー、それさー、冗談でやったら受けると思っても、実際やるとなると勇気がなくてできないジョークだよね。
それを天然でやれるのはKさんしかいないよね。すごいねー。
って褒めたつもりで言ったんだけど、言い終わるや否や、今までシャキシャキと軽快な音を立ててたスキばさみが突然、ザクって音に変わり、そこから自分の髪が一まわり短くなってしまったのは、本当の話です。